大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第二小法廷 昭和29年(あ)448号 決定

本籍並びに住居

福島県白河市字円明寺四二番地

店員

南条一寿

明治三八年一〇月三一日生

右に対する公職選挙法違反被告事件について昭和二八年一二月二一日仙台高等裁判所の言渡した判決に対し被告人から上告の申立があつたので当裁判所は次のとおり決定する。

主文

本件上告を棄却する。

理由

被告人の弁護士毛利将行の上告趣意は、事実誤認、量刑不当の主張に帰し上告適法の理由とならない。

被告人の弁護人渡辺酉蔵の上告趣意は、違憲を主張するけれどもその実質は刑訴法上の問題で上告適法の理由とならない。のみならず、弁護人から公判期日延期の申請があつても、その申請の理由につき何等疏明もしない本件においては、原裁判所は、これを許さなければならないものではない。原裁判所は右申請を許さず当初指定した公判期日にその公判を開いたものであつて、その法廷において右申請を許さない旨の決定を宣したからといつてその決定を被告人並びに弁護人に通知する必要はない。又本件は必要弁護事件ではないから、弁護人が出頭しなくても開廷することができるものであり、原審は刑訴三九一条に基き検察官の陳述を聴いて結審し弁護人提出の控訴趣意書に含まれた事項につき判決したのであるから、控訴趣意書につき審理しないとの主張は理由がない。又原審における所論控訴趣意を精読すれば、その内容は、専ら量刑不当の主張のみであつて第一審判決の事実誤認を非難する趣旨ではないと解せられるから原判決は控訴趣意に包含された事項につき判断を遺脱した違法も存しない。その余の論旨はいずれも、事実誤認量刑不当の主張に過ぎず上告適法の理由とならない。また記録を調べても同四一一条を適用すべきものとは認められない。

よつて同四一四条、三八六条一項三号により裁判官全員一致の意見で主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 霜山精一 裁判官 栗山茂 裁判官 藤田八郎 裁判官 谷村唯一郎)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例